道産木材データベース


ヤナギ科(ハコヤナギ属を除く)


 道内には掲載済み(2009年9月号)のハコヤナギ属3種以外に,ケショウヤナギ属1種,オオバヤナギ属1種,ヤナギ属18種が自生する。種数が多いため,ここでは道内に広く分布するものや知名度のあるものについて記述し,その他は簡単な紹介にとどめる。
 科としては,高さ5cmに満たないものから,高さ30m,太さ1mを超えるものまで多様な形態を持つ種を含むが,生態的には雌雄異株の落葉樹であり,春早く開花して白い長毛を持った種子(柳絮:りゅうじょ)を風で飛散させ,いち早く開放地に定着すること,また材質的には軽くて軟らかいことが共通している。
 ヤナギ(柳)の名は,(葉が)細長い,柔らかいという形容として多くの生物に使われ,ヤチヤナギ(フトモモ科,ただしミヤマヤチヤナギはヤナギ科!),クマヤナギ(クロウメモドキ科),ヤナギタンポポ(キク科)などと紛らわしい。ヤナギラン(アカバナ科)に至ってはヤナギともランとも類縁はない。柳葉魚(シシャモ),柳腰などと動物やヒトに使われる例もある。


●ケショウヤナギ属

名称  和名:ケショウヤナギ
     漢字表記:化粧柳
学名  Chosenia arbutifolia (Pallas)A.Skvortsov
分布  北海道(十勝,網走,日高),本州(長野県),朝鮮半
    島からカムチャッカにかけての大陸極東部,サハリン
生態・形態
 玉石の多い河原に生え,高さ25m,太さ1mに達する。十勝川水系が分布の中心であるが,国内では長野県上高地の梓川に隔離分布する。紅色の枝と白紛を帯びた小枝との対比が美しい。果穂は垂下し,ヤナギ科では珍しく風媒花。


●オオバヤナギ属

名称  和名:オオバヤナギ
     別名:アカヤナギ(赤柳)
     アイヌ語名:トイススtoy-susu(墓・柳)など。学名の属名はここか
    らついた
     漢字表記:大葉柳
学名  Toisusu urbaniana (Seemen)Kimura
分布  北海道,本州(中部以北),南千島
生態・形態
 河畔林に多く生え,初期成長が早く高さ30m,太さ60cmになる。樹皮は深く縦裂し鱗片状に剥がれる。枝先が垂れる。葉はエゾノバッコヤナギと似るが,下面が無毛。雄花は8cm,雌花は10cmに達する太く長い花穂を垂下する。


●ヤナギ属

○細葉ヤナギ類 英名:Willows 挿し木ができるグループ

名称  和名:タチヤナギ
     漢字表記:立柳
学名  Salix subfragilis Andersson
分布  日本,サハリン,朝鮮半島,ウスリー,
    中国東北部
生態・形態
 低地の水辺に生える小高木で高さ10m,太さ30cmになる。樹皮は褐色で縦に割れず,不規則に薄く剥がれる。若葉は中ほどが褐色を帯び,成葉は披針形から長楕円状披針形で細鋸歯縁。葉柄が長く1.6cmにおよぶ。花は葉より遅れて咲き長さは2〜6cm,雄花の葯は黄色。ネコヤナギから1か月遅れ,6月に入ってから柳絮を飛ばし始める。成長期の浸水状態によく耐え,休眠期間は完全な水没にもよく耐えるため,他の樹木が生育できない冠水する場所にも群落を作る。

名称  和名:シロヤナギ
     漢字表記:白柳
学名  Salix jessoensis Seemen
分布  北海道,本州(東北部)
生態・形態
 川辺や湿った平原に生え,高さ30m,太さ1mに達し道内のヤナギ属で最も太くなる。群落を作らず,単木的に生える傾向がある。樹皮は帯褐灰色で縦に細く割れ目ができ薄く剥がれる。「柳に枝折れなし」の格言に反し1年生枝の分岐点がもろく,きわめて折れやすい。葉は長楕円形から被針形,先がとがり基部は鋭形または鈍形,縁に細鋸歯がある。表面は濃緑色でやや光沢があり,裏面は紛白色。開花は開葉と同時で雌花は淡黄緑色,雄花の葯は黄色,長さ2〜5cm。大木になるため記念樹として老木が残されていることも多い。

名称  和名:オノエヤナギ
     別名:ナガバヤナギ(長葉柳),ヤブヤナギ(藪柳),
    カラフトヤナギ(樺太柳)
     アイヌ語名:ススsusuなど
     漢字表記:尾上柳
学名  Salix sachalinensis Fr. Schmidt
分布  北海道,本州,四国,千島,サハリン,カムチャッカ,ウスリー,
     アムール
生態・形態
 湿地や川岸に生え,高さ25m,太さ40cmになる。枝はまっすぐで開出しない。葉は革質で細長く,先が長くとがり,基部はくさび形,鋸歯はないか波状の鋸歯縁,少し裏側へそりかえり,表面は暗緑色,無毛,光沢があり,裏面は淡緑色または紛白色,長さ10〜16cm,幅1〜2cm。雄花は円柱形,長さ2〜4cm,径10〜12mm,葯は黄色で先が赤い。雌花は2〜4cm,径8mmで果穂は長さ4cmになる。道内では分布がたいへん広く,最も一般的な種であるが,特徴がなく鋸歯がはっきりしない個体では同定が困難なことがあり,特に葉縁の巻込みが大きな個体はエゾノキヌヤナギとの区別に注意を要する。アイヌ語でも本種が基本的なヤナギとして呼ばれている。和名は四国からの報告に基づくため尾上(尾根の上)とされ,本州でも山地に分布するが,道内では河畔林が分布の中心でありやや違和感がある。

名称  和名:エゾノキヌヤナギ
     別名:ギンヤナギ(銀柳),
    ウラジロヤナギ(裏白柳)
     アイヌ語名:学名(種小名)はアイヌ語のペッ
    ススpet-susu(川・柳)だが,本種のみを指した
    名称なのかなど語源は文献からは不明
     漢字表記:蝦夷の絹柳
学名  Salix pet-susu Kimura
分布  北海道,本州(東北北部),サハリン
生態・形態
 水辺に生え,高さ13m,太さ30cmになる。樹皮は灰暗色または暗褐色で縦に不規則な割れ目が入る。よく分枝し,小枝は斜上しややまっすぐ。若葉は表面に白綿毛があり,先を除いて縁は裏面にまく。成葉は細く尾を引くようにとがり,長さ10〜20cm,幅1.2〜2cm,基部はくさび形で鋸歯はない。裏面が絹毛を密生し銀白色であること以外はオノエヤナギとよく似る。花は開葉前に咲き,雄花は卵形から長楕円形,長さ2〜3.5cm,径1〜1.5cm,葯は黄色。雌花は長さ3.5cm,幅7〜9mm,果穂は10cmに達する。

名称  和名:エゾヤナギ
     漢字表記:蝦夷柳
学名  Salix rorida Lackschewitz
分布  北海道,本州(長野県),サハリン,朝鮮半島,ウスリー,
    アムール
生態・形態
 小石の多い川岸に生え,高さ15m,太さ1mに達する。小枝は紫褐色または帯褐緑色でしばしばケショウヤナギのように白紛を帯びる。葉は細長くとがり,基部はくさび形で細かい鋸歯がある。表面深緑で光沢があり,裏面紛白色,両面無毛,長さ8〜12cm,幅1.5〜3cm,托葉が目立ち長さは8〜14mmで落ちにくく,秋の落葉後も着いているものがある。この托葉は同定の良い目安になるが,開葉直後は非常に小さくタチヤナギやエゾノカワヤナギとの区別が難しい。花はネコヤナギについで早く,開葉より先に咲き,長楕円形で長さ3〜4cm,径1〜1.5cm。果穂は長さ5cmになる。雄花は長楕円形,葯は黄色で目立ち,川に沿って群落をなす傾向があるので早春の河原を霞のように染める(1ページ目写真)。

名称  和名:エゾノカワヤナギ
     漢字表記:蝦夷の川柳
学名  Salix miyabeana Seemen
分布  北海道,本州,四国,九州,朝鮮半島,
    中国東北部
生態・形態
 川の砂礫地や岸に生える低木または小高木で高さ5mほど。葉は長さ6〜16cm幅1.1〜2.7cmと細長く,先はとがり,基部は鋭形,細鋸歯があり,表面は緑色,光沢があり,裏面は淡緑色で光沢はない。細長い托葉がありヤナギ類としては大きく,長さ2.2cmに達する。花は葉より先に咲き,雄花は長さ4cm,葯は黄色。雌花は長く4〜8cm。

名称  和名:イヌコリヤナギ 柳行李を作るコ(ウ)リヤナギに似ているが役に立たないという意味
     アイヌ語名:ウライススuray-susu(梁・柳)など
     漢字表記:犬行李柳
学名  Salix integra Thunb.
分布  北海道,本州,四国,九州,朝鮮,ウスリー,南千島
生態・形態
 日当たりの良い小川の縁や湿地に普通に生える低木で,高さ2〜3mまれに6mになる。葉は対生または互生し,狭い長楕円形で下面紛白色,両面無毛,低鋸歯縁。葉柄はきわめて短く3mmほど。花は開葉前に咲き,葯は濃紅色,細長い円柱形で斜上からほとんど水平に開出する。

名称  和名:ネコヤナギ
     別名:カワヤナギ(川柳),エノコロヤナギ
    など
     漢字表記:猫柳
学名  Salix gracilistyla Miq.
分布  北海道,本州,四国,九州,朝鮮,中国,
    ウスリー
生態・形態
 川の縁など水に近いところに普通に生え,高さ3mほどになる低木。若葉は表面にも灰白色の軟毛があり,裏面は灰白色の絹毛を密生する。成葉は革質,長楕円形で先はとがり,微鋸歯縁,長さ7〜13cm,幅1.5〜3cm,裏面は絹毛をやや密生する。ヤナギ類で最も早く,道北地方ではかなり積雪がある時期,開葉前に大きめの花を付け,雄花は長さ3〜6cm,葯は初め紅色,花粉が出た後は黒くなる。雌花は2.5〜4.5cm,果穂は花後伸びて9cmに達する。

その他の細葉ヤナギ類
・カワヤナギ Salix gilgiana Seemen
 道内では渡島半島に分布するが,エゾノカワヤナギとの区別は難しい。

○広葉ヤナギ類 英名:Sallows 挿し木ができないか難しいグループ

名称  和名:エゾノバッコヤナギ
     別名:エゾノヤマネコヤナギ(蝦夷の山猫柳),コウライバッコヤナギなど
     アイヌ語名:チプ(ニ)ススchip-(ni-)susu(舟になる柳)など
     漢字表記:蝦夷の婆っこ柳(婆っこはお婆さん(東北方言)で,花を老女の白髪に見立てた)
学名  Salix hultenii var. angustifolia Kimura
分布  北海道,南千島,サハリン,カムチャッカ,朝鮮半島,中国東北部,シベリア東部
生態・形態
 広く山地や平地に生え,落葉広葉樹と混生する。高さ15m,太さ60cmになる。樹皮は暗灰色,古くなると縦に不規則な割れ目ができる。葉は楕円形または長楕円形で波状鋸歯縁か全縁,長さ8〜15cm,裏面に密毛がある。雄花は葉より先に咲き,楕円形,長さ2〜2.5cm,径1.8〜2.5cm。雌花は円柱状長楕円形,長さ2.5〜3.5cm,径1.4〜1.7cm。

名称  和名:キツネヤナギ
     漢字表記:狐柳
学名  Salix vulpina Andersson
分布  北海道,本州(東北,関東北部・東部)
生態・形態
 日当たりの良い丘陵・山地に生える低木。高さ0.5〜2mでよく分枝する。葉は倒卵形,長楕円形または楕円形で,先がとがり基部はくさび形から円形,低鋸歯または微凸鋸歯があり,長さ5〜12cm,幅2.5〜5.5cm。

その他の広葉ヤナギ類
・ミヤマヤナギ(ミネヤナギ) Salix reinii Franch. et Savat.
 亜高山から高山に生える。
・タライカヤナギ Salix taraikensis Kimura
 道東の湿原に生える。
・バッコヤナギ Salix bakko Kimura
 エゾノバッコヤナギと酷似するが,小枝の皮を剥いだ裸材に隆起線条がある。道内では南西部に分布。

○その他のヤナギ類
 このほかに低木の高山性ヤナギ類として次の4種がある。
・エゾノタカネヤナギ Salix yezoalpina Koidz.
 利尻島と大雪山の高山帯に生える。
・ミヤマヤチヤナギ Salix paludicola Koidz.
 大雪山系の湿地にはえる固有種。
・ヒダカミネヤナギ Salix hidakamontana Hara
 日高山系,夕張山系から報告があるが分布の詳細は不明。
・エゾマメヤナギ Salix pauciflora Koidz.
 日本で最小のヤナギで大雪山の固有種。高さ1〜2cmしかなく,10円玉と比較してその小ささがわかる(右写真)。


木材の性質

 散孔材。各種とも材は軽くて軟らかい。オノエヤナギでは辺心材の境界は不明瞭で褐白色から淡褐色。バッコヤナギでは辺心材の境界はおおよそ明瞭で辺材は白色または黄白色,心材は淡褐色から淡黄褐色。年輪はほぼ明瞭。肌目はおおよそ緻密。

※上記の数値等は「木の事典第3集第16巻:平井信二 かなえ書房 1982」から引用しました。
 木材の性質それぞれの意味については,連載1回目の2007年12月号で説明しています。


主な用途

 細葉ヤナギ類の代表的な用途は,挿し木の容易さから護岸樹である。ネコヤナギ等の花が着いた枝やオノエヤナギの枝が板状になった奇形である石化柳(セッカヤナギ)は花材として用いられる。オオバヤナギ等はかつて下駄やマッチ軸木に用いられた。オオバヤナギ,(エゾノ)バッコヤナギ等大径となる種は裁ち板,まな板とされることがある。アイヌはオノエヤナギでイナウ(木幣)を作ったので,イナウニススの名がある。


林産試験場によるヤナギ類を利用した研究成果品

・アルコール(エタノール)
 里山の林地や河川敷等で生産できるので食糧と競合しない,収穫に季節を問わないなどの樹木の性質に加え,細葉ヤナギ類は挿し木の容易さと初期成長の早さ,強い萌芽性から生産性が高く,再生産も容易なため,バイオマス利用が期待される。各種の木材の中では糖化しやすいためバイオアルコールの原料として有望視されている。
 河川敷等に生えるヤナギ全般を対象としているが,特に上記の条件がそろい,優れた育種株があるオノエヤナギ,エゾノキヌヤナギを使った研究を進めている。
 参考サイト:林産試だより2007年7月号特集「バイオエタノール」
http://www.fpri.hro.or.jp/dayori/0707/2.htm
   同   :2009年11月号「ヤナギからバイオエタノールを作る」
http://www.fpri.hro.or.jp/dayori/0911/1.htm

参考

・原色日本植物図鑑 木本編【II】:北村四郎・村田源 保育社 1979
・日本の野生植物 木本I:佐竹義輔ら 平凡社 1989
・知里真志保著作集別巻I 分類アイヌ語辞典 植物編・動物編:知里真志保 平凡社 1976
・ヤナギ類 その見分け方と使い方:斎藤新一郎 (社)北海道治山協会 2001